転職サイトや就活情報サイトを眺めていると、
「大規模で社会的にインパクトのあるシステム開発に携わることができるからやりがいがある」
という人がいます。
私自身もSIerで大規模なプロジェクトに関わっていました。
ここでいう「大規模」とは、関わる人数が多く、予算が大きく、期間が長く、お客様が大企業であるということです。
大手SIerの社員は単価が高いため、大きなお金が動く大規模なプロジェクトでないと利益が出ません。
必然的に、多くのSIer社員は「大規模なシステム開発」に携わることになります。
大規模システムのやりがいとは
「大規模システムに関わることで、社会に大きなインパクトを与えることができる」
などと表向き誇る人は一定数いますが、私が長年SIerの仕事を見る限り、「大規模だから仕事が楽しい」なんて感じている人は誰もいませんでした。
「大規模だから楽しい」というのは、外向きのPRだったり、自分のプライドを満たすための単なる詭弁に過ぎません。
というのも、「大規模なプロジェクト」だからといって、「自分の名前」が表に出るわけではありません。
たくさんの人がいる中での一つの歯車として、日々の業務をこなします。
無論、サラリーマンである以上、歯車であることに不満を持つ意味はないのですが、大規模プロジェクトの場合は逆にやりがいを感じにくくなっています。
大規模プロジェクトの中でSIer社員が何をやるかというと、
「調整役」
です。コーディネーターです。
「マネジメント」といえば聞こえはいいですが、利害関係者との認識の共有であったり、下請けの進捗管理だったりと、付加価値が高いとは感じられない作業がほとんどです。
知的労働でもなく、かといって単純労働でもない、面白くもなく、スキルも身に付かない、そんな業務です。
システムが大規模だろうと、目の前の業務が退屈であることに変わりはありません。
「大規模システムだからやりがいがある」
なんて言う人は単に思考停止で無理やり「やりがいがあることにしている」だけでしょう。
個人にとって、システムの開発が大規模だろうと小規模だろうと関係ありません。
自分の名前が前に出て、成果が自分のものと対外的にアピールできることに、人間はやりがいを感じるのです。
「国家のプロジェクトだからすごい!」
「社会的に重要なシステムだから偉い!」
とか考えている人もいるかもしれませんが、それで「すごくて偉い」のは会社であって、中の個人には関係ないのです。
大規模プロジェクトに関わるのはむしろ、マイナス面の方が大きいといえます。
利害関係者が多すぎると仕事が進まない
一部の方が誇る「大規模プロジェクト」は関わる人の人数がものすごく多いので、いちいち調整に時間がかかります。
調整に時間がかかるということは、会議が増え、無駄なチャットなりメールが増え、人と人の利害関係の把握が大変で、報告が増えるということです。
とにかく面倒で面白くない作業が増えます。
システムの規模とやりがいには相関がありません。
システムに関わる人数とやりがいは反比例します。
人数が多くなればなるほど、面倒なやり取りは増えます。
面倒なやり取りばかりで仕事が全く進みません。
やる気がある人ほど、大規模プロジェクトの中ではやりがいを見出だせなくなります。
業務とビジネスのつながりが見えない
大規模システムの開発である個人が担う役割は非常に小さいものです。
小さな小さな歯車の一つで、目の前の仕事をこなしても自分の仕事とビジネスのつながりが見えません。
全体像が見えないからです。
極端に細分化された職務に没頭していると、自分たちが何を売って、どうやってお金を稼いでいるのかがわからなくなります。
大手SIerで働く人の中には、ビジネスを語ることができない人が多くいます。
「どうやってお金儲けをするか」
「お金をどうやって生み出しているのか」
に無頓着だからです。
大規模システムの保守・運用・エンハンスに従事して、ビジネスを語るのは無理でしょう。
お金の動きが見えないからです。
結果として、大規模システムに関わっているけどビジネスセンスゼロ、みたいな人が大量に生まれます。
ビジネスセンスがないということは、会社から出るとお金を生み出せないということです。
「大規模システム」というマウント
SIer社員は目の前の業務がくだらなければくだらないほど、「大規模」でマウントを取ろうとします。
規模が大きくてもお前ができるのは下請けの管理だけだろう?と言いたくなりますが、なんだか「大きいとすごい」みたいに思われるんですね。
大きくて無駄ばかりのCOBOLプログラムの修正を外注に投げているような人が、なぜかすごい仕事をしている風に誇らしげにしています。
個人が何を成し遂げたか、を語る人はいません。
工数が大きいプロジェクトのマネジメントって偉いの?
SIerでは「●●MMのプロジェクトのマネージャーをやってました」といって、規模が大きいプロジェクトのマネジメントをすることで実績を誇る文化があります。
大きければ大きいほど偉いのです。
私はSIerにいながらにして、こういう「工数マウント」に疑問を抱いていました。
システム開発は少ないメンバーで内製した方がはるかに早く、正確に成果を生み出せるからです。
「2000MMのプロジェクトマネージャーです!(私はすごいです!)」
みたいな自己PRはよく見ましたが、そろそろ価値観を変えなければいけないのではないでしょうか。
小さなチームで尖った成果を上げる方がよっぽどカッコいいし、社会に役に立つと思います。
大規模システム開発は無駄だらけです。
とにかく仕事が進まず、余計な資料ばかりを作っています。
規模が大きいから偉い、という考え方を捨てない限り、どうしても規模を大きくさせる方向にインセンティブが働いてしまいます。
誰だって会社で認められたいからです。
でも本来は工数は少なければ少ないほどいいはずです。
目的は「システム開発」なのに、なぜ「工数」が評価基準になるのでしょうか。
小さい工数で目的を達成できたほうが、お客様も幸せなはずです。
予算を無駄遣いしまくって、その成果を誇るという、歪んだSIer観は捨て去るべきだと思います。
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