SIerはオワコンオワコンと言われて10年が経ちますが、一向に終わる気配がありません。
それどころか、「DX」というバズワードを武器に、大手SIer各社は営業をかけ、大型案件を受注し、業績を伸ばしています。
SIerはたしかにオワコンです。ですが、「オワコン」についてもう少し掘り下げないと、「SIerの何がダメで、なぜダメなのに無くならないのか」がわかりません。
SIerがオワコンと言われる理由
SIerがオワコンと言われるのは、その古臭い業務形態や技術的な知識の無さからです。
令和の時代に黒電話を使って仕事をしている会社があるとします。

現代に生きる我々が見たら、「やべー古臭い会社だな」と思うでしょう。
SIerで使われている技術は、変化が早く進化し続けるITの世界では、黒電話並に古臭いものです。
具体的には、COBOLと呼ばれる1959年に開発されたプログラミング言語を使っていたり、10年前のバージョンの Java を使っていたりで、現代の技術にキャッチアップする気はありません。
そんなSIerを見て「オワコン」と笑うのが、新しい技術を使ってウェブサービスを開発している人達です。
スマホを使っている我々から見て、黒電話がオワコンに感じるのは仕方がないでしょう。
SIerの人達が使っている技術はオワコンです。ですが、SIerが黒電話を使って生み出す成果物はお客さんが必要としているものなのです。
そこに誤解があります。
古い技術でも顧客に使われたら良い

SIerの業務は、新しい技術を使って新しい何かを開発することではありません。
「デジタルの時代だからさァ、DXでなんかいい感じにイイもの作ってよぉ」
みたいに言う、お客様を満足させるものを作ることです。お客様は日本のおじさんです。日系大企業のおじさんは基本的にIT音痴なので、使われている技術が新しいかどうかなんてわかりませんし、興味もありません。
「ITを使って業務をなんかいい感じにする」
に応えるのがSIerであり、その役割は黒電話でしっかりと果たしてきたのです。
System of Record の世界で、SIerは顧客に貢献してきたわけです。
System of Engagement の世界
2010年代後半から、IT技術を使って顧客体験を向上させたい!という要望が上がるようになってきました。
業務を効率化するだけでなく、IT技術を使って攻めの姿勢で売上を向上させたい、という顧客が増えてきたわけです。
それまでのITは業務を補完するものでしたが、これからのITは売上を作る主要な武器となるのです。
System of Engagement の世界では、「顧客体験」が重視されます。
使っていて気持ちが良いユーザーインターフェース。迷わない使い方。快適な操作性。
そういうものはSIerがとても苦手としてきたものです。なぜならSIerでシステムを統括するプロジェクトマネージャーは現代のUXなど何も知らないおっさんで、経験も全く無いからです。
プロジェクトを評価するおっさんも無知です。そのような無知な連中の下で働く若手も現代の技術は知りません。
UXの部分は「外注」することになりますが、SIerの社員は自分たちでは決して手を動かさないので、SIerの社員に知見が溜まることはありません。
つまり、SoR(System of Record) の世界では存在感を発揮できていたものの、SoE(System of Engagement)の世界では魅力的な提案はできなくなっているのです。
名ばかりのDXプロジェクトの乱立

2021年現在、大手SIerでは「名ばかりのDXプロジェクト」が乱立しています。
古くなったシステムをリプレイスするという名目で、30億円以上のお金と2年以上の期間をかけて、COBOLのシステムをクラウドに乗せようとしています。
その「リプレイスプロジェクト」ですが、「オンプレで動いていたものをクラウドに移すからDXプロジェクトである」みたいなめちゃくちゃな理屈で社内の稟議を通しており、リプレイスしたからといって、顧客が使うインターフェース部分は全く変化がないのです。
つまり、顧客にとって何の価値も生み出さないクソプロジェクトにとんでもないお金が注ぎ込まれているのです。
そんな無駄なことをやり続けられるのは大手SIerの体力が凄まじいからですが、中にいた身としては、「腐った組織が行き着くところまで行ってしまって、もう末期状態になってしまっている」と感じました。
中にいる人達は誰もが一生懸命仕事をしているフリをして、まともな「価値を生み出す仕事」をしている人は誰もいなくなっていたのです。
そして驚くべきことに、SIerの中にいる人達は、何の価値も生み出していないのに、
「俺たちはとても重要な仕事をしている!」
と疑うこともなく、意味のない仕事にひたすら残業し続けていたのです。
大手SIerは潰れませんが、「SIerの中にいる人間が腐っている」点については自信を持って「間違いなく”Yes”」と言えます。
SIerはオワコンなのか?
2010年頃までは、IT業界を志す人がSIerに就職するのは自然なことでした。
当時はiPhone3GSが出たばかりで、スマホを持っている人が少数派だったような時代です。
LINEが2011年に生まれ、コミュニケーションのスタイルがガラッと変わりました。
メールは普段の連絡には使われなくなり、「電話をかける」のも基本は無料になりました。
2010年以前と大きく変わったのは、「時間の使い方」と「お金の使い方」です。
人々は可処分時間の多くを「ウェブ」に使うようになりました。
これまでテレビを見ていた時間はYouTubeに流れ、音楽や映画を借りにTSUTAYAに出かけることもなくなり、暇な時間はInstagramやTikTokを見て過ごしています。
それと共に、お金もウェブ経由で使うようになりました。
これから死にゆく老人世代以外の多くの人は、リアル店舗でお金を使うよりもアマゾンで使うお金の方が多いのではないでしょうか。
インスタのおしゃれな素人を見て気になる服を買い、化粧品やサプリもウェブで見つけてきます。
昔のようにファッション雑誌やヘア雑誌を買う人もいなくなりました。
インスタグラムを探せばいくらでも参考になる人はいるからです。
時代は大きく変わりました。
ウェブを中心に消費されるようになったのです。
企業はアマゾンで出品するか、手数料が嫌なら自前でウェブショッピングサイトを立ち上げています。
ウェブ経由で物を買ってもらえるように、インスタやFacebookに広告を載せています(私にはよく、NIKEの広告が表示されます)
さて、本記事の主題に入ります。
ウェブの時代に変わり、これからも加速していく中で、SIerで働くのはリスクが高いと考えます。
というのも、SIerのビジネスがウェブとあまりにも相性が悪いからです。
ウェブのビジネスは変化を前提とします。
素早く出してみて、顧客の反応を見て、改善を繰り返してきます。
いわゆるアジャイルな開発で対応する領域です。
ですが、SIerのビジネスは変化を前提としません。
口では「変化に対応するものが生き残るのだ」とかほざきますが、実際は変化を極端に嫌います。
「計画」に膨大な時間をかけ、「計画通り」に開発を進めるために色んなものを無理やり帳尻を合わせます。
最初の「計画」はプロジェクトマネージャーの脳内および会社の偉い人の想像の範疇の中にしかなく、顧客の反応を見て柔軟に仕様を変更したりはしません。
とにかく固く、計画を何より重んじ、チャレンジしないことを至上命題としています。
正確にいうと、「計画通り達成すること」を「チャレンジ」としていて、新しい技術を取り入れることはチャレンジとしていません。
SIerでの働き方がこれからの時代にマッチしないのは明確です。
そういう意味で、SIerでの働き方に染まってしまうのはリスクだと考えます。
ジョブ型雇用と解雇規制によってSIerの存在価値がなくなる

日経新聞などでは毎日のようにジョブ型雇用への転換を煽っています。
ジョブ型というのはJob Descriptionを書いて、社員に明確な職務を元に雇用契約を結ぶということです。
SIerの存在価値は、ユーザー企業にITスキルが全く無いところにあります。
ユーザー企業がITを丸投げするためにSIerは存在するのです。
メンバーシップ型雇用の元で採用された「総合職」が「IT部門」に配属されてもなーんにもITのことなんてわかりません。
システムなんて作れません。
なーんにもわからないので、SIerにシステム構築を投げて、ぼったくられるのです。
ですが、ジョブ型雇用にシフトして、ユーザー企業が明確な職責の元でシステム構築要因を採用できるようになれば、世界は変わります。
そこにはもちろん、年功序列や終身雇用の撤廃もセットです。
解雇規制も緩和しなければなりません。
ITを何も知らない馬鹿な総合職を上司につけてしまうと、IT部門は機能しなくなってしまうからです。
今後10年で、ジョブ型雇用へのシフトと解雇規制は進んでいくと思われます。
既得権(今の正社員達)は激しく抵抗するでしょうが、世の中の流れがそっちに向かっているのと、そもそも高齢化と不景気で日本企業に余裕がなくなれば、アホな高齢者員を切る方向に舵を切らざるを得ません。
そうやって解雇規制の緩和とジョブ型雇用へのシフトが進むにつれて、ユーザー企業の「IT部門の内製化」はちょっとずつ進んでいくでしょう。
そもそもこれからは「ウェブはおまけ」ではなく、「ウェブが主戦場」なのです。
自分たちの主力の戦場を、動きの遅いノロマで頓馬で鈍足なSIerに任せていては、いつまで経ってもビジネスの変化についていけないでしょう。
ウェブで戦うために、「ITの内製化」の動きは必然的に進みます。
そうするとSIerの役割は薄れてきますし、SIerのプロジェクトマネージャーみたいな、
「自分で何もできないけど社内のルールに沿って計画を作り、計画通りに進めるために下請けを詰める能力だけはすごい」
みたいな人は不要になります。
ユーザー企業の内製化が進み、SIerの多重下請け構造が解消されていけば、自分で手を動かせない人はごく一部を除きいらなくなるのです。
2021年から20年先、2040年にはそういう未来が必ず来ると思います。
今20〜30代の人は、20年後にはSIerに完全に染まり、その時代には使い物にならなくなっているでしょう。
SIerは沈みゆくタイタニック号のようなものです。
しかしタイタニック号に比べて非常にゆっくりと誰にも気付かないスピードで沈んでいきます。
甲板に水が溢れてくるまで、中の人は沈んでいることに気付かないでしょう。
逆に2021年現在はユーザー企業から「DX」といって法外なIT費用をぼったくり、儲かっているくらいです。
ここで何度も「ぼったくり」と書いていますが、SIer側には「ぼったくっている」意識はなく、「正当な工数を反映した対価」となっています。
ただ、改修内容や難易度に比べて明らかに高い費用を請求されていても、ユーザー側に知識がないと反論できないのです。
また、法外なコストがかかる理由が、SIer側の開発体制(多重下請け構造)だったり、社内のクソ煩雑な承認手続き、会議地獄のせいであることにもユーザー側は気付けません。
その結果、自分たちでさっさと作ってさっさと直せば10分の1以下のコストで済むようなレベルのものに、ものすごい費用をかけてしまい、逆にビジネスに重しになってしまっています。
ITが武器になるはずが、ITによって足を引っ張られてしまっているのです。
こんな歪みが永遠に続くとは思えません。
近い将来、是正されていくはずです。
SIer自体は完全に滅びることはないかもしれませんが、縮小していく可能性は大いにあります。
中にいても「未来で使える技術」は身に付きません。
そんなリスクを取ってまで、目先の安定やちょっとした昇給(30代で1000万)のためにSIerに就職するのでしょうか。
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